AI(人工知能)による小説執筆、AIによる作曲、AIによる翻訳、AIによる音声生成、AIによるアート作品の創出等々、AIの進歩は日進月歩で進んでいる印象だ。そんなAIが我々人間に突き付けているもののなかに、深層学習(ディープラーニング)の産物たる「ディープフェイク」がある。

「ディープフェイク」は、ある画像や映像をAI技術で加工・編集し、それがまるであたかも本物かのように思わせるものを創造する技術。例えば、ある映画の1シーンで俳優の顔に筆者の顔を合成して、筆者が演じているかのような映像を創り出すことを指す。
ただ、著名政治家や経営者のような一定の影響力を有する人物に不適切な発言や振る舞いをさせたような作品がネット上で拡散し、社会問題化しつつある他、悪用される懸念もあり、速やかな法整備が求められている。また、人物のみならず衛星写真までもがディープフェイクの対象となっている事例もあるようで、まさに運用次第では世界をひっくり返し得る可能性を持っているとも言えよう。
足もとでは、ディープフェイクに対する警戒感の方が大きい印象であり、これを阻止する静脈・虹彩認証技術や、偽動画の検知サービス等を展開しようと意気込む企業が多くなっているように見える。
とはいえ、ディープフェイクは正しく活用すれば、特にエンターテインメント業界により幅を持たせ得ると考えられる。
参考になるのが、先日伝わった一件。世界的に非常に有名な某SF超大作の製作会社であるルーカスフィルムが、あるYouTuberを正式に雇用したのである。そのYouTuberは、これまでに映画の俳優を置き換えたり、若い頃の顔を再現するに留まらず、故人の顔を再現し、その再現性の高さには、一部では本家超えとも言われ、定評があった模様。
日本では「AI美空ひばり」という取り組みが行われた。主に倫理観を巡った賛否両論はあったようだが、好意的に受け止めた層も少なくないと見られる。ディープフェイクは、活用方法や善意の意図次第ではエンタメのみならず教育を含む様々な場面で有益なものとなる可能性を秘めているように感じる。
