三中全会の不動産対策に注目 ~投資テーマは「配当」、「輸出関連」、「家電」~
人民元安や欧米との緊張関係等の懸念材料があるものの、景気が持ち直しつつあることに加え、7月以降の重要会議で追加の支援策が出る可能性があり、中国株式市場は下値切り上げの展開を見込む
6月の中国市場は下落
6月1~21日の香港ハンセン指数は-0.3%、上海総合指数は-2.9%と、日経平均株価の+0.1%、米S&Pの+3.6%を下回った。高級品の販売不振から高級酒メーカーが売られ、地方政府の財務問題から地方に依存する公共事業関連、不動産会社が売られた。一方、半導体等の情報技術関連銘柄が堅調で、その比率が相対的に高い香港市場は下げ渋った。
懸念材料もあるが主要会議での政策に期待
足元ではドル高を背景に、人民元対ドルレートが、人民銀行が設定するレンジの下限で推移し、市場金利も上昇している。ドル高(人民元安)が継続する場合、株価の更なる押し下げ要因になると考えられる。また、欧米との緊張が高まっており、11月の米大統領選に向け米国との緊張関係は更に悪化することも考えられる。
ただ、中国景気は持ち直しつつある。政府の減税策等を背景に活発な設備投資が続き、5月半ばに発表された不動産支援策を受け、新築住宅販売床面積は改善傾向にある。5月輸出は新興国向け中心に伸び率が高まり、デフレ懸念も後退している。7/15に発表予定の4~6月GDP成長率は、前年同期に成長率が高まったため、前年同期比では1~3月の同+5.3%を若干下回ろうが、前期比では改善を見込む。
また、7月に予定される三中全会(第3回党中央委員会全体会議)では不動産対策が、7月末から8月初めにかけて開催が見込まれる党中央政治局会議では、年後半の経済政策が決定されよう。不動産問題は中国経済の主要問題であるため、対策が出れば株式市場は好感するとみる。また、人民元安が続く場合は、金融当局が元安防止策を採用すると考える。株価は下振れする局面もあるとみられるが、下値を切り上げる展開を見込む。
「配当」、「輸出関連」、「家電」が投資テーマ
三中全会等で不動産対策が決定した場合、不動産株の反発が見込まれる。ただ、不動産問題は中長期的な問題のため、問題解決の道筋が明らかになるまでは投資対象として避けた方が無難だろう。
そのような中で注目されるテーマとしては、「配当」が挙げられよう。政府は上場企業の投資価値を高めるため配当性向を引き上げるよう促している。高配当銘柄としては、チャイナ・モバイル(00941、配当利回り7.0%、QUICK〈6/21時点〉)やペトロチャイナ(00857、同6.3%、同上)等が挙げられる。ペトロチャイナは中東の地政学リスクの高まりから石油価格が上昇する場合、恩恵を受けると見込まれる。
また、「輸出関連株」も利益成長が見込めよう。今年は国内景気が冴えないため、輸出ドライブがかかりやすいと考える。輸出の伸びは23年7月の前年同月比-14.3%を直近の底に今年5月には同+7.6%へ回復しつつある。米アップル向けが売上全体の7割以上を占めると推測されるラックスシェア(002475)、EV普及に伴い熱管理部品の採用拡大で恩恵を受ける浙江銀輪機械(002126)等の輸出関連株は人民元安で増益率が高まろう。
最後に「家電」を挙げる。政府による家電の買い替え補助金を背景に、国内の家電の販売が伸びつつある(23年7月同-5.5%⇒24年5月同+12.9%)。また、大手家電メーカーは概ね海外売上比率も高いことから輸出関連株とも言えよう。更に美的集団(000333)は産業ロボット大手のクーカを子会社に抱える。製造設備の買い替え支援策を受け、設備投資が高い伸びを続けており、その恩恵も受けよう。
(投資情報部 白岩CFA)